映画:『グレイテスト・ショーマン』(原題:The Greatest Showman)

 

鑑賞日:2018年2月23日

観賞場所:TOHOシネマズ日本橋

 

<あらすじ>

19世紀の興行師P.T.バーナムの(いちおう)伝記映画。しかし史実とは相当の乖離があるようだ。主人公バーナムは仕立て屋の息子で、過剰なまでの貧乏描写がある。箱入り娘のチャリティを見初め、(どういうわけか)ある程度穏健に彼女と結婚し、娘ふたりをもうける、というところまでがイントロ。

勤め先の倒産で路頭に迷ったバーナムはお得意のぺてんで銀行から融資を受け、ミュージアムを買い取るも客入りは芳しくない。そこで、娘のアドバイスもあり街中の「変わりもの」を見せ物にすることを思いつく。これが当たってバーナムは一躍金持ちに、チャリティの両親の実家近くに大邸宅を構えるまでになる。

批評家の悪評は気にもとめないバーナム、しかし上流の仲間入りへの夢はやまず、上流階級出身の「お上品な」劇作家カーライルとコンビを結成する。カーライルのコネでヴィクトリア女王に謁見するまでになったバーナム一団だが、ここでバーナムは欧州一のオペラ歌手と誉れ高いリンドに取り入ることに成功する。バーナムの手掛けたリンドの公演は世界中で賞賛を受け、彼の名声はさらに高まるも、家族やサーカス団とはすれ違いに、、、というストーリー。

<批評>

予告編を見た時から『SING』に多少のポリコレ要素を追加したものかと考えていたが、予想以上に『SING』そのもの。

テンポは相当によく、ミュージカル映画としてはうまくできているが、そのためにあまりにもストーリーが犠牲にされている印象。成功という光に目のくらんだバーナムが家族との小さな幸せの大切さに気付く、というのはベタながら必然的なシナリオなのだが、もうひとつ、批評家と気取り屋の上流たちにウケる『本物』の出し物ではなく、大衆を笑顔にするサーカスが自分のスタイルだ、というところに回帰しなければいけなかったのではないか。そもそも(おそらく史実においても)フリークスをおもちゃとしてしか見ていなかったバーナムを善人として描く気がなかったのかもしれないが、そうだとしてもラストで提示されたバーナムの言葉"The noblest art is that of making others happy."と整合的なものにならない。

マイノリティが利用される形にはなりながらも、そこに自己肯定を見出すというきわめて難解な状況を扱っているにも関わらず、この点に関するメッセージ性はみあたらない。トランプ時代に制作された映画としてはまったく残念な仕上がり。アメリカの批評家から評価がえられなかったのも納得。とはいえ、フリークショーの道徳性について特に思いを馳せたこともなく、他者のまなざしからの自由を漠然と求める現代大衆を喜ばせるには十二分の映画で、まさにバーナムがいうところのthe noblest artたる作品なのかもしれない。

脚本:D

音楽:A

バーナムの娘たちの可愛さ:B+

総合:B-